民と人間 : 23. 列車

私は列車の中で揺られながら、父と話すことについてメモに書き出す。

会社の今、事件の真相、最近の出来事…

しばらくメモに書き出しているうちに、ふとこんなことを思った。
一体父はどんな精神状態なんだろう。

精神状態によっては、聞けないこともあるかもしれない。
もしかすると、全く聞くことすらできない可能性だって十分にある。

母によれば、父はとても病んでいるとのことである。その状態で、会社の現在などを聞くことは難しいかもしれない。

そんなことを考えながら、電車の揺れを感じつつメモに書き出していった。

おおかたメモを取り終えると、まだ乗り換えの駅までしばらくあることを確認して、ゆったりとした姿勢を取った。

電車の独特な揺れが好きなのである。
車などでは出ない、大きく、ゆったりとした揺れ。
小さい頃は、お出かけのときは、目的地よりもこの揺れが好きでお出かけしていたものだ。

カーブのときの傾きや、減速や加速のときの揺れを体感しつつ、しばらく眠気と戦っていた。
乗換駅まであと1時間もない。ここで寝てしまえば確実に乗換駅を逃すと思って。

…結局15分程度寝ていたらしい。しかしながら、無事乗換駅は逃さずに済んだ。

乗換駅は山奥のやや大きな駅であった。
かなりの山奥ではあるが、周辺には公園や体験施設などがある他、特急列車が通ることもありそれなりに賑わっていた。

中でも、共和国では最大級のDiamond Expressが停車するようである。
共和国を東西南北、時には隣の国にまで縦断する寝台列車だ。旅行客から出稼ぎ労働者まで、幅広く利用されている。

これからこの特急に乗ってMoonValleyまで行く。

せっかくだから、富裕層の旅行客向けの1等車チケットでも取ろうと思ったが、私の中の何かがそれを止めた。
金持ちなのに、私はケチなのである…

そもそも旅行じゃない。
黙って寝室のついていない、席だけの車両のチケットを取って乗り込んだ。席だけの場合、それほど高くはなかった。

適当に周りに誰も居ない席を探してそこに座り込んだ。

しばらくして、列車が発車する。

あまり揺れなかった。
カーブの際も、減速、加速の際も、私の好きな独特な揺れは起きなかった。

さすがはDiamond Expressである。ほとんど揺れを感じさせない。

私はそのつまらない列車に乗り、GMSと実家があるMoonValleyを目指した。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

WordPress.com でサイトを作成
始めてみよう
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。