民と人間 : 16. 手紙

Dolphの意外な過去に一同は騒然とした。
Rodleyの言い出した妄想は一気に現実味を帯び始める。

GMSは表向きは平等さを尊重した企業であり、犯罪歴のある者を採用していることには違和感はなかった。実際、それほど重い罪を犯していなければ、技能さえあれば積極的に採用していた。
おそらく、Dolphの場合その開発技術を見込まれて採用されたのであろう。

本当に、追跡アプリの依頼先はDolphだったのだろうか。

さらなる情報を得ようとも、ビジネス仲間には内部調査委員会の者は誰もいない。
社長の息子であるはずの私でさえ、調査委員会からは除外されている。

「君社長の息子さんだよね? 情報得られないのかな?」

またDolphが私にとんでもないことを言い出した。
自分でもそれは考えた。しかし、GMSのシステムが完全にストップした今、Graywolfと連絡を取ることはできない。

電話を契約しておけばよかったと思った。今この時代、誰も電話など契約しておらず、携帯電話もネットワーク接続のみ契約することが一般的だ。

唯一残るは…手紙である。
実は、ネットワークの普及により手紙はほとんど用いられず、集配は週に3回程度でありいつ届くかわからないため、ずっと避けてきたのである。
しかし、唯一通じるとすれば手紙しか無い。

兎にも角にも、さらなる情報が手に入らない限りはどうしようもないということで、その日はビジネス仲間たちは解散した。

解散後、私はGraywolfに手紙を出すことに決めた。

パソコンでささっと書き上げて印刷した。親だから面倒な挨拶など必要ない。
GMSの問題の詳しいことが知りたい、ということ、そして、連絡を取りやすくするため、独自に立ち上げたチャットサービスの登録方法や私自身のアカウント名を記し、封筒に入れた。

あとはポストに投函するだけである。
最も最寄りのポストはとても酷く、週に1度しか集配が来ない。
流石にそれでは遅いので、少し遠出して郵便局に速達で出しに行くことに決めた。

最寄りの郵便局の位置を確認しようとしたが、GMSがストップしてしまったせいで地図が見られない。
こうなったら勘で行くしか無い。

水と封筒片手に、私は自室からでて玄関に向かう。
するとちょうど、インターホンが鳴り、私の名前を呼ぶ懐かしい声がした。

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